「子どもには、健やかに育ってほしい」——そう願う全ての親御さんにとって、「住まいの空気」は無視できないテーマです。特に、お子様のアレルギーへの懸念から「自然素材の家」に関心を持つ方が、福岡でも増えています。
しかし、いざ情報収集を始めると「無垢材」「漆喰」「珪藻土」など様々な言葉が溢れ、「一体何が本当に良いのか」「"自然素材風"の建材との違いは?」と、情報の渦に溺れてしまいがちです。
この記事では、福岡で50年以上木材と向き合ってきた専門家が、家族の健康を守るための「本物の自然素材」とは何か、その正しい知識と後悔しないための選び方を、どこよりも分かりやすく解説します。
そもそも「自然素材の家」とは?なぜ今、注目されるのか
化学物質を極力使わない、古くて新しい家づくり
「自然素材の家」とは、その名の通り、化学物質を接着剤や塗料に使った建材を極力避け、木や土、紙といった自然由来の素材をふんだんに使って建てられた家のことです。これは、日本の伝統的な家づくりに近く、古くて新しい、理にかなった建築手法と言えます。
シックハウス症候群やアレルギーへの懸念という社会的背景
近年、住宅の高気密化が進んだことで、建材に含まれる化学物質が室内に留まり、頭痛やめまい、アレルギー症状などを引き起こす「シックハウス症候群」が社会問題となりました。こうした背景から、家族、特に体の小さな子どもの健康を守りたいという意識が高まり、自然素材への関心が一気に高まったのです。
自然素材がもたらす3つの主なメリット
1.調湿効果
無垢材や漆喰は、まるで呼吸するように室内の湿気を吸ったり吐いたりしてくれます。これにより、夏はジメジメ感を和らげ、冬は過乾燥を防ぎ、一年を通して快適な湿度を保ちやすくなります。
2.空気清浄
漆喰の主成分である消石灰は、空気中の二酸化炭素を吸収する性質があります。また、木が発する「フィトンチッド」という成分には、リラックス効果や消臭・抗菌効果があると言われています。
3.リラックス効果
木の香りや、塗り壁の柔らかな質感は、人の五感に心地よく働きかけ、心安らぐ空間を生み出します。
【床材編】後悔しない無垢フローリングの選び方
家族が最も多く触れる床材は、素材選びの最重要ポイントです。
知っておきたい「針葉樹」と「広葉樹」の違いと特徴
針葉樹(スギ、ヒノキ、パインなど)
空気を多く含み、柔らかく温かいのが特徴。素足で歩いた時の心地よさは格別です。
広葉樹(ナラ、サクラ、カバなど)
組織が密で、硬く傷つきにくいのが特徴。家具などにも使われる耐久性の高い木材です。
アレルギーが気になるお子様におすすめの樹種は?
一般的に、アレルギーの原因となるアレルゲン(花粉など)の飛散が少ないのは、組織が緻密な広葉樹だと言われています。また、木の種類によっては特有の油分や樹脂が刺激になる可能性もゼロではありません。専門家と相談しながら、サンプルなどで実際の素材に触れて確認することが大切です。
「傷」や「メンテナンス」への不安を解消する正しい知識
無垢材、特に針葉樹は柔らかいため傷がつきやすいのは事実です。しかし、その傷も家族の歴史として「味」になっていきます。また、小さな凹みであれば、家庭で簡単に補修することも可能です。日常の手入れは乾拭きで十分であり、「気難しい素材」というよりは「愛情をかけて育てる素材」と捉えるのが良いでしょう。
【壁材・天井材編】部屋の空気をきれいにする素材
壁や天井は面積が大きいため、素材選びが室内の空気に大きく影響します。
日本の気候に最適な「漆喰(しっくい)」の驚くべき効果
石灰を主成分とする漆喰は、「呼吸する壁」の代表格です。高い調湿性能に加え、抗菌・抗ウイルス作用、消臭効果も期待できます。ビニールクロスにはない、職人の手仕事による美しい仕上がりも魅力です。
調湿性能で注目の「珪藻土(けいそうど)」との違いと使い分け
珪藻土は、植物性プランクトンの化石から作られる土です。漆喰よりもさらに高い調湿性能を持つとされていますが、表面がポロポロと剥がれやすいという性質もあります。人がよく触れる壁には漆喰を、湿気が特にこもりやすい収納や寝室には珪藻土を、といった使い分けが考えられます。
予算を抑えつつ健康も諦めない「紙クロス(和紙壁紙)」という選択肢
塗り壁は魅力的ですが、コストが気になる方も多いでしょう。その場合の選択肢となるのが、和紙などを原料にした紙クロスです。ビニールクロスと違い通気性があり、化学物質の放散も少ないため、健康面で安心して使えます。
【断熱材編】見えない部分こそこだわりたい、健康断熱材
完成後は見えなくなってしまいますが、断熱材も健康に大きく関わる要素です。
一般的な「グラスウール」と何が違うのか?
多くの住宅で使われるグラスウールは、ガラス繊維でできた断熱材です。施工時に細かい繊維が飛散し、吸い込んでしまうことへの健康リスクを指摘する声もあります。また、湿気に弱く、壁内結露を起こすと断熱性能が大きく低下してしまう弱点があります。
木の繊維から作られる「セルロースファイバー」のメリット・デメリット
新聞紙をリサイクルして作られる、木質繊維の断熱材です。高い断熱性能に加え、木が持つ調湿性能で結露を防ぎ、防音・防火性能にも優れています。デメリットは、専門の機械で吹き込むため施工できる業者が限られ、コストが比較的高くなる点です。
断熱性能と健康、両方を手に入れるためのポイント
どの断熱材を選ぶにせよ、最も重要なのは「隙間なく、正しく施工すること」です。どんなに優れた素材も、施工がいい加減では性能を発揮できません。見えない部分だからこそ、施工の丁寧さや実績をしっかりと確認することが大切です。
「自然素材の家」を建てる会社選びで、絶対に確認すべき3つのこと
最後に、後悔しないためのパートナー選びのポイントです。
ポイント1:各素材のメリット"だけでなく"デメリットまで正直に話してくれるか
どんな自然素材にも、長所と短所があります。「自然素材だから、すべて良い」といった説明しかしない会社は要注意です。傷つきやすさやメンテナンスの必要性といったデメリットまで正直に伝え、その上であなたの家族に合った提案をしてくれる会社を選びましょう。
ポイント2:なぜその素材を選ぶのか、専門的な根拠を分かりやすく説明できるか
「人気ですから」「雰囲気が良いですよ」といった曖昧な理由ではなく、「この部屋は湿気がこもりやすいので、調湿性能の高い漆喰を使いましょう」「お子様が走り回るので、床は傷に強い広葉樹のナラ材をおすすめします」など、専門的な根拠を持って提案できるかどうかが、プロフェッショナルである証です。
ポイント3:完成後には見えない「構造」や「施工」へのこだわりを持っているか
自然素材の魅力を最大限に活かすには、その土台となる家の構造や、丁寧な施工が不可欠です。見えない部分の施工写真をきちんと公開していたり、構造へのこだわりを熱心に語ってくれたりする会社は、信頼できるパートナーである可能性が高いでしょう。
まとめ:家族の未来のために、"本物"を見極める知識を
「自然素材の家」は、家族の健康を守り、日々の暮らしを豊かにしてくれる素晴らしい選択肢です。
大切なのは、流行やイメージに流されず、それぞれの素材が持つ特性を正しく理解し、自分たちの家族に本当に合った選択をすること。そして、そのためには、あなたの不安や疑問にどこまでも真摯に向き合ってくれる、信頼できる専門家をパートナーに選ぶことが不可欠です。
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私たちは、ただ自然素材を使うだけの会社ではありません。
材木店として50年培った知識で、一つひとつの素材が持つ特性を科学的に理解し、あなたの家族の体質やライフスタイルに合わせた最適な組み合わせをご提案します。